大会概要

　日本国際保健医療学会第33回西日本地方会を、小さな地方都市の小さなNPOである「じゃっど」が開催いたしますことを大変光栄に思います。

　今大会のテーマは「途上国の食と健康」としました。20世紀の、途上国の食と健康の最重要課題といえば「飢餓」でした。しかし、近年のグローバリゼーションと経済発展は、｢飽食｣や「栄養のアンバランス」など、全く別の健康問題ももたらしています。今地方会では、我々がこのような多様化した途上国の食の問題にどのように関わっていけるのかを、考えたいと思います。

　現在、世界中のどこでもコーラが飲め、ハンバーガーやフライドチキンが食べられます。人間が地域毎に分散し、環境に適応してそれに合った食生活をしていた時代とは大きく変わりました。この「食」のグローバリゼーションは「アルコール」「高カロリー」「肉」｢乳製品｣等を多くの社会にもたらし、｢生活習慣病｣や「偏食」という大問題を持込みました。21世紀に入り、国連も、多様化した食と健康問題への対策を、新しい目標に掲げようとしています。

　今回のシンポジウムでは、ラオス、南太平洋、マラウイなどの伝統的食の現状と健康の関係、近年の食の変換がもたらす問題、それを回避するために教育や知識普及がどのように役立つかを発表していただきます。また先進国の指標では困難な、途上国の生活習慣病のスクリーニングを、如何に簡便に安価に効果的に行うかの、方法論も検討します。

　市民公開講座は二題とさせていただきました。「じゃっど」は、学校保健をメインとする、国際保健医療関係のNPOですが、実際のところ医療保健専門家はあまりおりません。それでも20年継続できたのは、専門家でないメンバーの熱意があったからです。今回のテーマについては、寧ろ一般の方々に聞いていただき、身近な話題として関心を持っていただく方がよいと考えました。

　一人目の演者は、｢ルワンダの教育を考える会｣を主催される、カンベンガ・マリールイズさんです。マリールイズさんは戦火に焼かれたルワンダで、子供達の教育を支援することで復興を支えておられます。今回は、｢ルワンダの子供たちの教育と栄養｣というテーマで、大きな意味での「教育」、つまり食を通じた健康を育む｢食育｣、知性を育てる「知育」、体を丈夫にする「体育」、を話していただきたいと思います。

　二人目の演者は、名古屋大学大学院環境研究科教授の横山智先生です。先生は地理学の大家で、多くのアジアの国をフィールドに、環境と食文化の関係を研究され、多くの著書・論文がおありです。食が如何に環境に左右されるものなのか、そして食生活の変化がどのような事態をもたらすのか、｢途上国の環境と食｣というタイトルで、興味深いお話が聞けることと存じます。

　会場は、薩摩川内市の鹿児島純心女子大学で、口演、ポスター発表、関係団体ブース、シンポジウム、市民公開講座等を開催します。交通のアクセスはJR川内駅からバスが利用できます。会場には駐車場もありますので、こちらもご利用ください。宿泊については、早い時期のグループ予約によるディスカウントも計画しており、追って情報をお知らせします。

　最後になりましたが、地方会の開催にあたり、薩摩川内市役所、鹿児島純心女子大学など、様々な官民の組織や方々にお世話になりました。今回の地方会を通じて、国際協力の機運が益々高まることを期待致します。

日本国際保健医療学会 第33回西日本地方会
大会長　　　　帖佐　徹